【長崎バス、伝説のエンジン一期生】

1601~1622号車についてここではご紹介します。

長崎市街を走る最古参車両、長崎バス1601~1622号車についてご紹介します。

 
 
 
 

坂の街に革命を起こした、V8エンジン路線バス第一陣。

1995年にいすゞ自動車より販売された、いすゞ「キュービック」最後のモデル、KC-LV380N。

この車種の特徴は何といっても路線バスで初めて登場したV8エンジンの搭載でしょう。通常のバスでは物理の教科書に出てくるあの「熱機関」を4~6個搭載しているのが路線バスの常識ですが、このバスはなんと「8つも」搭載しています。それらを4つずつ束ね、2つの束をVの字状に組み合わせていることから「V型8気筒エンジン」と呼ばれます。長崎バスでは1996年から導入開始。初年の前期導入車では、22台導入されました。

 

8PE1型エンジンの簡単なご紹介をします。

ISUZU 8PE1

総排気量 15201cc(タクシー7.5台分)

・8PE1-N
  標準出力エンジン 出力176kW(240PS)/2300rpm トルク834N・m(85kg・m)/1400rpm

・8PE1-S
 高出力エンジン  出力210kW(285PS)/2300rpm トルク1000N・m(102kg・m)/1400rpm

 90年代の革命児・16代前期のあらまし

長崎バスではこの年は全車両高出力エンジン8PE1-S型エンジンで導入、板バネで購入しています。

車外は長崎バスでも前衛的な仕様となっており、このグループからテールランプが通称「バス協テール」からS-lightの角型テールに変更されました。しかし15代、95年式の仕様を受け継いでいる要素も多く、後部ドア直前に側面行先を設置。この仕様でははこのグループが最後の導入となりました。

また全体的に見れば、「長崎ならでは」の仕様を随所に見ることができます。

その最たる特徴として、後面上部に付けられたスピーカー。これは狭隘路で離合不可能な大きさの車と対峙したとき、さらに後続車がおりバックできない際に使います。後続車にバックするよう呼びかける際に使用するこの装備。狭隘路を大型車で突き進む長崎ならではの特徴と言えるでしょう。バックギアに入れとONになります。1997年式の車両まで見ることができますが、実は現在の最新型のバスでも、エンジンルームの中に取り付けられています。

車外の仕様はKC-規制に移行しつつも、15代に準じた仕様となっています。
前ドアの手すりはナナメ掛けではなく地面に対して垂直、ドアの梁と重なるように設置。
15代後期からの仕様である、タイヤハウスの縁取りの金属パーツを組んでいます。また、各座席のひじ掛けはU型の金属にプラスチックパーツを取り付けた構造を採用し、現在長崎バスの現役車両では16代前期導入車のみに見られる仕様となっています。

長崎バスでは毎年新車を前期後期に分けて導入しており、1601~1622号車は1996年の前期導入分に当たります。中型の導入はなく、16代前期導入車は全て大型路線車での導入になりました。外観から4種類に分けることができます。

 

西工58MC 標準尺・一般低床(1601~1605)

1601~1605号車がこのグループにあたります。B-Ⅰ仕様で導入され、全車標準尺の組み合わせになています。重低音響く四角い車体の低く構えた姿勢には独特の風情があります。
 

他県でも導入例の少ない2段サッシュながら拡大窓(公営事業者によくみられる2段サッシの標準窓(小さい)と96MCの最拡大窓の中間)で導入されています。

【各号車概略】

1601  ダイヤランド営業所所属(2022年春廃車)
1602  時津営業所(2020年 柳営業所より移籍)
1603  神の島営業所
1604  神の島営業所
1605  神の島営業所

純正キュービック 標準尺・一般低床(1606~1620)

1606~1620号車がこのグループに当たります。
最大の特徴は後部ドア直前の窓に付けられた側面の行先。二つの矢絣を重ねたような赤と青の側面デザインも完成度が高く、若干エンジン開口部に赤の帯が重なった塗分けとなっています。
また、長崎バスならではの特徴として、サイドミラーのバーからさらに横方向に棒を継ぎ、バックミラーが設置されています。
全車一般低床(現在のノンステップバスより少し大きめのタイヤを装着、車高が少し低め)で導入されています。
15代とは異なり、エンジンの大型化と共に後ドアステップと後面との間のスペースは座席を置かずデットスペースとなっています。その中でも16代前期のみ、行先をそのスペースに置かないため、この部分の窓を固定窓としています。(実際は接着式ではなく、縦方向に大きい開口部のサッシュ窓をはめ込んだ格好)
16代の中でも最も標準的な仕様であり、現在でも多くの車両が活躍しています。
【各号車概略】
1606 時津営業所
1607 時津営業所
1608 桜の里営業所
1609 桜の里営業所
1610 桜の里営業所
1611 桜の里営業所
1612 時津営業所
1613 時津営業所
1614 松ヶ枝営業所(2022年春離脱⇒神の島工場留置)
1615 ダイヤランド営業所
1616 大橋営業所 大橋営業所最後の1996年式
1617 時津営業所
1618 柳営業所
1619 柳営業所
1620 柳営業所

純正キュービック 標準尺・標準床(1621のみ・引退済)

長崎バスで一台ものだった同車両。言わずもがな、全車一般低床(前記)で導入されていますが、この車両は例外でした。
なんと、この車両のみ標準床で購入されており、若干高床でした。
というのも、この車両は今よりも道路状況の悪かった飯香の浦線の専用車として導入された車両でした。
急カーブと急な坂が入り組む同路線では、後扉付近と地面の接触を防ぐため、この路線のみ前中ドア車が投入されていました。
この頃になると既に前後ドア車で導入されていましたが、若干ホイールベースの伸びたKC-規制の導入では標準床で導入。この車が道路条件に配慮した最後の「飯香の浦専用車」となりました。
晩年は柳営業所、最晩年は短期間ですがダイヤランド営業所に転属し活躍しました。
【各号車概略】
1621 ダイヤランド営業所(旧飯香の浦専用車)

純正キュービック 短尺・一般低床(1622のみ)

 

これまた16代前期1点ものが1622号車です。

通称「田上専用車」と言われた、旧田上営業所所属車両です。16代以前は田上営業所にも他営業所と同仕様の新車が導入されていましたが、KC-規制車からの若干のホイールベースの長い車での導入により、田上営業所には他とは異なる短尺車両が導入されました。

連番となる、16代後期トップナンバー1623号車は同じ短尺車ながら、16代後期車のため前記の点で内装、外装ともに異なっています。

田上営業所から、営業所自体の承継先となった神の島営業所に移籍。現在ではダイヤランド営業所で活躍しています
短尺車の仕様として、全体的に短い印象であることはもちろんのこと。公式面前から2,3番目の窓の幅が小さいことで容易に判別可能です。短尺車自体が希少であり、全体でもキュービックに限れば6台のみとなっています。

【各号車概略】
1622 ダイヤランド営業所(2022春神の島より移籍)

 

2022年春まで一切離脱車を出さなかった無事是名馬、いすゞV8路線車の第一陣。少しずつ減少の足音が近づいていますが、少しでも長い活躍を願うばかりです。

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